陶板画に纏わるシンクロニシティ陶板画に纏わるシンクロニシティ・3

2008年07月11日

陶板画に纏わるシンクロニシティ・2

 何年もの間、気に入る聖母の陶板画を探し続けて、今年2008年3月にやっとカルロ・ドルチの「悲しみの聖母のミニアチュール」をヤ○オクで見つけたということは、この前の記事にも書きました。

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カルロ・ドルチの「親指の聖母」(1680年頃) ※2009/8/19訂正

 「重要文化財 聖母像(親指のマリア) 銅板油絵 額縁共縦26.7x横21.5cm 17世紀 イタリア製 作者不詳 長崎奉行所旧蔵品(宗門蔵保管)」は、東京都台東区上野公園の東京国立博物館に所蔵されていますが、見つけた陶板画はその写しです。オリジナルと違って、悲しい表情というより穏やかな表情をしていて、崇敬の対象というより観賞向けの工芸品としての絵付けになっています。それもこの陶板画は図柄が左右反転しています。陶板はたぶん百年くらい前のアンティークだと想われます。窯元はドイツですが、無名なのでそんなに高価なものではありません。額は現代のものですが、ドイツの装飾模様で数十年は経っているようです。

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伊豆高原 【天使のいる回廊 天使巡礼 天使堂】 追夢人とシンクロニシティ
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 ブラジルから船便で送ってもらい、3週間もかかって手元に届いたのは4月にはいってからでした。発砲スチロールの箱の蓋を開けると、運搬の途中で額から陶板が外れてしまっていて、陶板とマットの内枠とが擦れて、内枠の石膏が所々細かく損壊してガタガタの状態でした。陶板画は無傷で無事だったのは不幸中の幸いといえますが、額装は修復が必要になるため、直ぐには天使堂に飾れませんでした。

 自宅近くの額屋さんではこの修復の技術はなく断られてしまい、世界堂は画材専門店で、修復はもともとしておらず、一時途方にくれてしまいました。知合いのアンティーク屋さんに額の修復できるところを紹介してもらおうとも考えましたが、3月の第3土曜日に行った神奈川県大和市のやまとプロムナード古民具骨董市で、出店されていた額屋さんから名刺をもらっていたことを想い出し、問い合わせてみたら、幸運にも快く引き受けてくださいました。
 
 美術額装を専門にしている青松堂のご主人は、やまとプロムナード古民具骨董市の出店は、もう10年ほどだそうで、花鳥風月的な油絵と新品の額を販売しておられます。私は7年前くらいから大和の骨董市に行ったりしていたので、よく青松堂の前を往復していましたが、どちらかというと古びた額に興味のあった私は今までその露店を覗くことはほとんどありませんでした。
 ところが、3月の第3土曜日には、金彩の真四角の額が2つ私の目を惹きました。ロシアイコンに興味を持ってから、金彩の額にも関心があったので、その額のお値段などをお訊ねしようとお声を掛け、お互いに絵画好きの話で盛り上がったりしました。
 お店には古い額もたくさんあるというので、お店の場所を教えてもらうと、東京都の稲城市にありました。私の実家のお隣の市で、駅では数個しか離れていませんでした。実家に帰るときは、いつも青松堂の最寄り駅を通ることですし、ご無沙汰している実家にもそろそろ顔見せに行かないといけないし、古い額も見たいので、近いうちにお寄りしますということで、その時に名刺をいただいていたのでした。

 問い合わせたその日の夕方に、陶板画と破損した額をもって行きました。ご主人は額の装飾模様を見るなり「ドイツのですね」とお判りになりました。マットのワインレッドのベルベットもドイツのもので、これは日本にない色なので、そのまま交換しないで使用し、破損した内枠部分だけ、整形して金箔で修復するのがよいということになりました。

 ご主人は最初、巻物や掛物を仕立てたりする表具を職業に選ぼうとされたそうですが、最近の日本画の絵の具の厚みが増してきたそうです。私は最初、何を仰りたいのか、その意味が分からなかったのですけれど、岩絵の具で描かれた掛物の、絵の具の量を多くして厚くなっていると、巻いた時にひび割れてしまうので、額に入れるようになるから、巻物にはしなくなるだろうとその先を考えて額装をお仕事に選ばれたと教えてくださいました。
 その時、絵の具も量産され、絵の具も入手しやすくなり、豊かになって、絵の具をふんだんに使って描くことが、丸めるこは物理的にひび割れを招き、結果的に巻物や掛軸が敬遠される、それはひとつの職業と文化が衰退するということに気付かされました。

 一方、こんなことも考えさせられました。社会的規制が厳しくなることで、職人の職業がなくなることもあるということです。
 銅版画では、制作過程で腐食技法など酸などの薬品を使い、その廃液がでるので、産業規模に対しては自然環境に配慮して規制が厳しくなったそうです。採算の合わない工場は縮小または閉鎖され、彫師、摺師などが就職口としてなりたちにくくなったそうです。結果的には、すべての作業工程を、芸術的な創作活動として個人レベルで行う銅版画家に委ねられることになるのですが、彫った銅版に金メッキをかけたりする場合は、個人レベルでは設備的に難しいでしょう。
 鋼板に比べて銅板は柔らかく、銅版画は何十枚も摺ると彫った凹部が磨耗したり、潰れてきて、刷り上った作品から繊細さが失われてきます。枚数を多くする場合には、その防止策として前もって銅版に金メッキを施しておくそうです。私は金メッキ自体、銅版画の本来の繊細さを失う原因ではないかと疑っているのですけれど、それは別としても、その職人さんも恐らく少人数のことでしょう。ご高齢で引退されても後に続く人を育てる社会的環境も産業的には無かったことでしょうから、後継者もいないことでしょう。
 文化的な銅版画の一つの技術工程が消えつつあることを意味しています。

 ご主人は、額作りの技術にしても、お隣の国に流出して、安く量産されて、逆輸入されるようになったので、ご商売も厳しいとおっしゃっていました。
 その時には、若いご子息さんもいらして、オークション関係にもお詳しく、陶板画や西洋アンティークに関してはご主人よりも更にお詳しく、3月の毎日オークションのカタログを見せていただいたり、少しですがいろいろと専門的なお話を聞かせていただいていました。
 話ついでに、ご子息さんのお住まいをおききすると、私の実家と同じ市内で、それもむかし農家をしていた祖父の畑だったところが今では住宅地になっている付近のようでした。
 話はとびますが、その近くにはまたカソリック系の幼稚園もあり、彼岸の墓参りの時には、その幼稚園の前を久振りに通ったばかりで、子どもの頃にはなかった白い聖母子像が建てられていて嬉しくなったのを想い出していました。
 夕方おしかけて時のたつのを忘れていろいろ話し込んでいると、とっくに夜になっていました。今日行くからと連絡しておいた実家から何をしているのかと携帯に電話がかかってきたり、その数分後には、伊豆にひとりで行っていた連れ合いから、心配しているだろうからと、いつもはそういう電話をくれたことなど一度も無いのに、その時に限って連絡をしてきました(爆) すっかり長居してしまっていたので、それを切っ掛けにおいとましたのでした。
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