夕べと悲しみL'Amour Blesse

2009年02月12日

黒猫

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 今年の山焼きも晴天に恵まれて無事に終った。燃えたのはススキの穂の上のほうだけで根元までは燃えきらずに茎が残るのだろう、白煙も薄らいだ山肌は縞や斑模様になっていた。天使堂のバルコニーから室内に戻って、北窓から改めて黒くなった大室山を見上げた。


伊豆高原 【天使のいる回廊 天使巡礼 天使堂】 追夢人の門番日誌
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 北窓の外側のすぐ下にはバードバスが置いてある。伊豆高原の野鳥がたくさん来ている。シジュウカラ、メジロ、ヤマガラ、ヒヨドリの常連さんの他にカワラヒワ、シメもきた。窓のすぐ隣のバルコニーにその日はリスもやってきた。
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 午後の冬の陽光があたってバルコニーと部屋のなかは暖かい。水浴びを嬉々としている小鳥を眺めながら来客を待っているとその向こうの天使堂の駐車場に道路を渡って黒猫がゆっくり歩いてきた。そのあと宅配便のヤマトのトラックの通りすぎる音に驚いて、外階段の下に駆け寄って振り向いている。トラックが去ってから、安心したように階段をのそのそ上ってきた。天使堂のエントランスの前でバードバスに向きを変え、こちらのほうにやってきた。窓の下を通り過ぎて、すぐ横のバルコニーに飛び乗った。私が見守っていることに気付かずに毛繕いを始めた。さっきまでリスがいたところだ。
 私は大きな声で「ニャー?」と鳴き真似をした。それも何回も。もう20年以上も猫を何匹も飼っているから、親愛の情を込めて猫そっくりの声で! 最初は吃驚した様子だったが逃げずに案の定、裂けんばかりに口を大きくあけてその黒猫も「ニャー?」と鳴き返してきた。私は飽きずに「ニャー?」と鳴き真似を繰り返す。黒猫も「ニャー?、ニャー?」とその度に鳴き返す。
 どうやら野良猫ではなさそうで、他人にも慣れているようなので、黒い毛糸の帽子を被ってからエントランスに出て、「ニャー?」と声をかけた。一瞬、ためらった素振りもみせたが、近寄ってきた。少し警戒しながらも、私のそばで「ニャー?、ニャー?」と鳴き返している。そのうち警戒心を解いたのか、立っていた私の脚に鳴きながら頭と身体を擦りつけてきた。私はしゃがんで「ニャ?」とできる限りの優しい声をかけてやった。
 まだ若い小柄の雌猫だ。黒い毛並みに雉模様がはいっていた。マスカットの葡萄のように明るく淡い緑の透きとほった瞳が美しい。少し目脂をつけていたけれど健康そうだ。
 外猫は撫でられない。外猫の病気の菌を我家の猫にもらわないためと情がうつらないようにするためだ。撫でるとどうしても情が湧いて、餌を与えたくなる。猫も餌をくれた家の中に入りたがるようになる。辛いけれど堪えながら、親愛の情をかわすしかないのだ。好きなだけ擦りすりさせてやってから、室内に戻り、北窓から覗いてみた。まだエントランスの前にツクンと座って中をじっとみつめている。
 どのくらいのあいだ、真冬の寒空の下で冷たい煉瓦の上にいただろうか。いつしか帰っていった。去る直前まであった猫の胸中を想うといつも悲しくなる。
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この記事へのコメント

2. Posted by 追夢人(ついむと)   2009年02月14日 21:19
{冠} Fu さま
 昨年は残雪のため時期が遅れて、大室山の山焼きを見そこなっていました。一週間遅れで、天使堂に向う途中、焼けた大室山を見た時は、真っ黒な印象で、それが目に焼き付いていました。残雪の白さとのコントラストが大きかったのだと思います。
 そのせいか、今年の焼け跡はキツネ色のお焦げといった印象で、縞や斑模様が気になりました。
 天使堂にきた黒猫は近くで見ると、薄めと濃い黒とでトラ模様がはいっていました。
 そして、その時間帯はクロネコヤマトのトラックの配達時刻でした。森に囲まれ人通りもほとんどないので、車とくにトラックのエンジン音は響くのですよ。
 ちなみによく通るのは、近くのペンションや南大室窯の車かワゴン、そこに来られたお客さまのお車か、タクシーです。それ以外は、宅配便とプロパンガスの会社のとゴミ収集のトラック程度です。
 
 今のところ気が付いた共通項は、大室山の黒い焼け跡の縞模様、黒猫、クロネコヤマトのトラック、黒猫の縞模様です(笑)
>猫って、猫好きの人が分かるんですね。
そうですね(笑) 猫はちゃんと判っていると想いますよ。私には猫の臭いもしっかり染付いているでしょうから(爆) 特に可愛がられて大事にされている猫は他人にも警戒を弛めているようです。
 普通の飼い猫(外猫)は他人には一応、警戒しますので、私にも近づきません。こちらから声をかけて反応して振り向いても、一定距離に近づくとだいたい逃げてしまいますけれど。
 猫を飼ったことのある猫好きの人は、野良か飼猫か、どんな飼い方をされているか、飼い主から愛情をかけられているか、猫の習性や個性も猫の表情を見るとだいたいわかるようになるものです。
1. Posted by Fu Shusei   2009年02月13日 15:12
>黒猫がゆっくり歩いてきた。そのあと宅配便のヤマト
ちょっとびっくり。
猫って、猫好きの人が分かるんですね。

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