描画技法
2012年11月12日 14:44
『アリスと白うさぎ』 ウチキトモコ
消しゴムはんこ(版画) はがき用紙 2011
七色洋品店*ナナイロヨウヒンテン*
Copyright(C) 2011 Tomoko Uchiki
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伊豆高原 【天使のいる回廊 天使巡礼 天使堂】 所蔵作品
展示室 「隠し部屋のアリス」 にて常設展示(予定)しています♪
門番 追夢人(ついむと)
2012年11月06日 23:44
五年程前だったかな、絵の展示会で、ペンで上手に線や細かな点描の作品を制作している、まだ駆出しの若い画家さんを見つけると、銅版画制作を奨めたりした。
それは、私が、線描とか、銅版画が好きという、誠に自分勝手な軽い動機からだった。
今は少し反省している。
私が30代前半の頃、カメラ撮影に少し凝ったことがある。中古の中級機種を使用していたが、ある時、撮影に同行していた友人の性能の良いカメラのファインダーを覗かせてもらった。それも明るいレンズで視野率の大きいファインダーを覗くと、まるで世界が違って見えた。シャッターを押す瞬間のインスピレーションが全く違ってくると直感した。
その経験があるから、作業工程が全く違えば、インスピレーションも大きく変わるだろうと思えるようになった。
手描きと銅版画では制作工程が全く異なるから、個人差もあると思うけれど、誰もが銅版画に適性があるわけではないし。
余談だけれど、手描きが得意な画家さんが、デジタル描画ソフトにもトライする場合、人によっては、インスピレーションが狂ってスムーズに上達できないことも起り得るリスクがあるようにも思う。
美しく繊細な線描をペンや鉛筆で描けるに越したことはないと思う。
余計なお世話とは思うが、腱鞘炎にならぬよう、脇目を振らずに描き続けて、腕を磨く方がよいと今では想っている。
ペン画、鉛筆画は、作家さんの個性がダイレクトに表れるからとても魅力的だし、奥も深いし、大好きになってしまった!
でもやはり、持論というものは、要望と同じく、私的な好みとか、利害や関心から発してしまう。
まだ反省が足りてないか!
2012年09月24日 04:44
手描きの油絵の色彩は、顔料の違い以外にも、表面には筆跡や塗り重ねなどの凹凸があるから、反射光の角度により微妙に変化する。
混色なら人の目に届くまでに干渉しあって多様に変化することだろう。
また照明の種類により波長は異なるし、自然光なら天候や季節や時刻によっても異なる。
室内にある壁など環境からの色の反射もあるので、肉眼は様々な影響を受けることになる。
また多くの人は両目で、様々な角度や距離から絵画の色を知覚する。
ある光源で、図柄ができるだけ歪まない様に絵画の平面の中心から垂直に離れたある一点から、単焦点レンズのカメラで撮影した写真では、次元が全く異なるから、たとえデジタルデータで色を忠実に再現したつもりでも、実際の油絵から受ける印象とは大きく異なる。
更にそれを高性能なプリンターで出力しても、表面の凹凸まで、同じ素材でなければ、分子レベルまでは再現できない。
そもそも、色ひとつをとっても、カメラでの撮影時に元絵のオリジナルの色が忠実に写し撮られたという確認は厳密にはできない。
それはせいぜい近い色で撮影者が妥協しているに過ぎない。
デジタルカメラのハードと内臓プログラムの性能がいくらよくても、保存した撮影画像のデジタルデータの出力の、ディスプレーやプリンターなどのハードやソフトの性能がそれ以下なら、意味が無いということも考慮しないと、無駄な経費と労力を費やすことになる。
そもそも、あるメディアに保存したデジタルカメラの撮影データなど、いつまで保存できるのか?
デジタルデータを長期間に渡って保存できたとしても、いつまでそれを再現するためのハードとソフトが存在するのだろうか?
デジタル技術の高性能さに目を奪われがちではあるけれど、そのほとんどが外部環境に依存している。
それも栄枯盛衰の激しい技術産業であることのリスクを考慮しておかないと十年も経たないうちに利用できなくなる場合も経験上あり得る。
2012年06月06日 11:44
多才な画家は複数の描画技法をそれぞれ探求しながら制作していることも少なくない。中にはオールマイティという感じでそつなくこなす画家もいるとは思う。
しかし、画家の表現したいイメージに最も適した技法に絞って制作している専門の画家、例えば、油彩画家、水彩画家、顔彩(日本画家?)、木版画家、銅版画家、などなどにとって、想像するに描画技法は画家の命ともいえるのではないか?
簡単な言い方をして大変恐縮だが、油彩や水彩にしても、言葉でいうと単純に聞こえるだけで、実際はそこからその画家独自の描画技法をあみ出していると思う。それは他人にはその作品を実際に観ないと感じられない領域だと思う。
描画技法は何だってよい、構わないという画家、画商、鑑賞者は、どんな立場(描く、売る、観る、買うなど)で、どういう意味合いで言っているのだろう。
少なくとも売る立場の画家、画商が、買う側に説明の必要はないという意味で、描画技法はどうでも構わないと言っているとしたら、その姿勢を疑う。
原版はまっさらの薄い銅板に作ります。
銅板を直接、ビュランという彫刻刃のドアノブの様な柄を握って鋭い刃で線を刻っていく技法をエングレービングと呼び、先が針の様な鉄筆(ニードル)で引っ搔くように線描して、捲くれのある凹み線を付けていく技法をドライポイントと呼びます。
刃が弧状の包丁の様な刀(ロッカー又はベルソー)の柄を握って揺り籠の様に左右に揺らして銅板全体にきめ細かな無数の刻み(目立て)を入れてから、バニッシャーやスクレーパーという鉄製の細長い耳掻きの先が尖った様な腹で、その刻みを磨きならすようにイメージを作る技法をメゾチントと呼びます。
エングレービング、ドライポイント、メゾチントは、銅板を直接、彫ったり、引っ搔いたり、目立てをするので、直接技法とも言われます。
2012年01月22日 08:44
「ミクストメディア」という呼称は意味不明
例えば、日本画に金箔や銀箔を使ったら、積極的にアピール、説明するでしょう!
ところが、絵画で「ミクストメディア」とかいう呼称、何のことやら意味不明。何も説明してない。何の混ぜこぜ? 何を使ってるかわかったもんじゃない。説明しない動機は、自己の不利益になる時。黙秘権を行使していると考えた方がよい。
少し例えは異なるが、土地付住宅の不動産の販売広告に土地の形状の記載がないのは、まともな土地はないのと同じ。良いことは、それ自体に価値があるから、必ず広告に載せている。
アーチストが表現手段に選んだ描画技法を真面目に位置付けないのは、自信のない証拠といえよう。
何か後ろめたい歴史があるのかと勘ぐられると厭味を言いたいのではない。
受け手を馬鹿にしていることに早く気付かないと、受け手も見る目を養えないし、成長もできない。そんなことを続けていたら、絵画市場はいつまで経っても成熟することはないだろう。バブリーな高額絵画の売り上げだけが、絵画市場の成熟ではない。
※ 以下、YM様からのコメントとのやりとり
【YM】 複雑な工程を経て制作されている作品は、そのひとつひとつを文字にしにくいのです。最も簡単な表現がミクスドメディアになるのでしょう。質問があれば、誠実にお答えしているつもりですが…。
【追夢人】 YMさま いちいち質問しないと、主要な技法がわからない表示を手抜きといいたいのです。YMさまの作品をなぜジクレープリントに手彩色と表記しないのですか?
例えば、黄金背景テンペラとかいう古典技法もあります。支持体(基底材)とかいう、絵を何に描いているのか、キャンバスとか、絹とか、羊皮とか、紙でも和紙とか、厚紙とか、ダンボールとか、ボードでも板とか、シナべニアのパネルとかも、額装してたらわからないし。
【YM】 確かに… 木製パネルに基剤、ジクレープリントに油彩など記載出来ると思います。
【追夢人】 小さなキャプションに長々と表示はできないとしても、メイン技法は明確にして欲しいです。少なくとも、タイトル、作者名、主用技法、支持体、サイズ、制作年(月)、販売価格などは基本項目と考えています。
【YM】 何でしないんでしょう? ちょっと考えてみた…
やろうと思えばすぐ出来ることをしないのは、やりたくないからでは?いろいろ細かく説明しようとすれば、販売の方もそれなりに知識が必要ですし。
【追夢人】 そうです。怠慢。悪しき慣習に過ぎません。
憶測で恐縮ですが、デパート系の、美術の販売担当は、多種多様な絵画を扱っていても、だから逆に全ての知識の習得までは追いつけない。たとえ学芸員の資格や美術検定を持っていても。町田市立国際版画美術館の学芸員でさえ、木版画の担当に訊いても、銅版画の原板のコーティング剤のグランドの剥がし方は知らなかったし。
それに大先生や画伯に今更、書いたメモを付けてとは頼みずらいだろうし、いちいち訊いて確認するのは手間がかかる。まともに対応する意志のある、能力のある画家は何割いるのでしょうね。
ミクストメディアは新技法でしょうから、まだ確立されてないのもあり、範囲を調整するのは難しい。棚上げして、十把一絡げに「ミクストメディア」にぶち込んでおけば一応、説明の擬装、カッコはつく。何ですか?と訊かれたら、内心『何~?そんなことも知らないんですか!』と丁寧に微笑んで威圧してかわしてしまえってことなのです。
若い画家も、駆出しも、弱い立場で画商や企画画廊に依存していたり、任せきりで無関心でいるとそんな売らんかなが罷り通ってしまう。
説明のある中身の確かな絵なら買う側ももっと真剣になれたのに何だか良くわからない物には手を出しにくくなる。実は売れたかも知れないのにちょっとした簡単なことでさえ手を抜いて楽をしようとするから、売れる者ものも売れなくなる。お金を出す側はもっと真剣だと想いますよ。
画家も画廊や画商と対等に緊張関係を持ってチェックしあってほしいし、画家みずから表現手段に選んだ技法については、その長所や素晴しさや良さをもっと自信を持って、受け手に言葉でアピールしてほしいです。
ミクストメディアは新技法でしょうから、なかにはまだ描画技法が確立されてない作品もあり、範囲を調整するのは難しいかも知れませんが、制作者がキャプションで丁寧に説明しなければ、販売担当がわかる筈がありません。
現場で調整に迷うことが、実は蓄積となり、どうすれば適切か?という次の段階に進められるのです。作品の物量が多い接客現場での経験を画家にフィードバックしながら、みんなで考えるのも活性化のチャンスと想いますよ。
【YM】 ミクスドメディアという言葉は示す範囲が広すぎて、適切では無いかも知れませんね。例えば、ジェッソで下地を作り、その上に油彩…も厳密に言えば純粋な油彩ではありません。現代の科学基剤ジェッソを使用しているからです。化学合成品を少しでも使用すると、ミクスドメディアとなるのでしょうか?
【追夢人】 振り出しに戻らないで(笑)
ミクスドメディアに還元するのではなく、それはひとまず置いておいて、個別具体的な作品に使用した、主に描画を特徴づけている画材や技法は何かを一言でなくてよいから、幾つか挙げてくださいって、お願いしているだけです。もちろん詳細な説明書の添付があればなお結構ですけれど。
キャプションの基本項目として欲しいのは、タイトル、作者名、主用技法、支持体、サイズ、制作年(月)、販売価格など。
主用技法が、厳密な意味で純粋な油彩かを問題にしているのではなくて、それなら、「ジェッソ下地キャンバスに油彩」と記載すればよいではないですか?書いてあれば、知らない人でも関心を持てば、例えば「ジェッソ」って何?と理解を深めていくきっかけにもなると想うから。
【YM】 大まかな素材(キャンバス、木板、布、紙など)、基剤(ジェッソ、漆喰など)、描画剤(油彩、水彩、ジクレーなど)は記載されていてもいいかも知れませんね。それ以上興味があれば、質問していただいて…販売の方も、しっかり勉強しておかないと。
プロですから、ごまかすようなことは御法度です。
お客様の中には、作家以上に詳しい方もいらっしゃいます。ですから、作家が何故その方法を選択しているのか…その理由をしっかり説明出来ないと。うさんくさいと思われるのは本意ではありませんので。