本画
2012年08月13日 04:44
画家は本画と印刷物の違いをどう考えているのだろう?
画家とイラストレーターの違いは、幾つかあるが、最終的に完成した作品について、その大きな違いが、後者のが印刷物であるということ。
印刷の特性から、画家や版画家の描いたある図柄の作品は同サイズの一枚ないし少数なのとは対照に、イラストは下絵に対して拡大または縮小も可能かつ大量生産も可能であるから、作品と受け手の関係が、前者はほぼ一対一(主に一個人)に近いが、後者は一対多数(マス)となる。ゆえにイラストは普及しやすい。それが個性的であればイラストレーターも識別認知される可能性が高くなる。
また創作の動機が、画家は主に内発的であるが、イラストレーターは第三者の意向が強く反映していることが多い。それゆえ、作品は、画家のはそれのみで独立しているのに対して、イラストレーターのは、本人の作品集としてもあリ得るが、主にイラストは、例えば、小説家の本の装丁や挿絵、音楽メディアなどの商品パッケージ、広告用のポスターなどの様に、共同作品としての有様が多くなる。
ところで、自称、画家が、現役で画集を出版する動機は様々あろうが、表現した世界を世間に広く普及させたいのだろうか?
しかし、本画と印刷物の違いをどう考えているのだろう?そもそも表現したい世界は何なのだろう?それに最も相応しい画材と描画技法は何だったのか?
例えば、鉛筆とか、ペンとか、パステルとか、油彩とか、顔彩とか、水彩とか、木口木版とか、エッチングとか、メゾチントとか、ではなかったのか?それでないと表現できない世界ではなかったのか?それらは、例えば、オフセットの輪転機の量産した印刷物ではそもそも表現しきれないからではなかったのか?
もちろん印刷物と代わり映えのしない作品しか描けない、摺れないなら、画材や技法にこだわる必要もなかろうけれど…。
私の知る限り、早くから印刷物で有名になった作家の、手描きの原画?に迫力はなかった。推測だけれども、それは無意識に印刷を想定し、知名度を上げることを優先しているから、印刷を然程超えられなくなるのだと思う。
もしそうならば、創作世界の表現は、文字でも、手工芸でも、陶芸でも、彫刻でも、建築でも、音楽でも、ダンスやパフォーマンスでも、何でもありえるから、特段、画家である必要はない。