自己表現
2012年08月14日 04:44
自己表現と受注制作のはざま
イラストレーターのイラスト制作は、資本力のある注文主を大前提にし、その完成作品が主に印刷物というところに特徴がある。印刷物は量産され廉価にできるため、既に存在する顧客市場に乗って普及しやすい。
イラストの完成作品は、例えば、小説の装丁画や挿絵など第三者との共作であったり、または、広告や商品パッケージなどの一部に使用されたりするので、イラストレーターのイラストが独立した作品として制作されることは基本的にない。
また、画家の作品制作には、作品の受け手としての他者を前提にしながら、内発的な動機を端緒とする自己満足を最優先した自己表現の創作と、発注者としての他者の要望を優先しながら、多かれ少なかれ自己表現との妥協点を見い出す創作とがあり、後者は、例えば、教会や寺院などから宗教画の依頼などの受注制作である。
イラストにしても、受注制作の絵画にしても、少なくとも発注者を満足させねば成立しないという点において、創作力や高度な技能の実力が制作者の大前提となるので、少数精鋭にならざるを得ないが、職業として継続できている場合は、知名度と社会的評価を伴っていることが多い。
一方、自己表現を主とする個人的な創作は、その気になれば誰でも始められるが、作品は一点物の場合がほとんどで、また数も量産に限界があり、その作品に共鳴する購入者も、限られた極少数の一個人になるので、その作品販売の収入のみで生活を支える職業として成立させるには社会環境のハードルは極めて高いといえる。